平成28年度 地域保健Ⅲ部(高齢者歯科)学術講演会のお知らせ

日 時:平成29年2月21日(火)19:30~21:00

場 所:高松市歯科救急医療センター 4階ホール

対 象:高松市歯科医師会会員および家族・スタッフ

※ 申込は高歯事務局までご連絡ください

演 題および講師:『誤嚥性肺炎を予防し高齢者の健康寿命を延ばす』

高松市民病院 呼吸器科 医師 河野 洋二 先生

(抄録)

肺炎は日本人の死亡原因の第3位であり、死亡するのは65歳以上の高齢者が96%と圧倒的に多い。

我が国の高齢化社会の進展とともに、高齢者人口は増加の一途であり、それに相関して肺炎の死亡率も増加傾向にある。高齢者の健康寿命を延ばすためには、様々な手段を用いて肺炎を予防していく必要がある。

今回は高齢者肺炎の70%を占め、特有の病因病態により起こる誤嚥性肺炎についてみていく。

誤嚥性肺炎は、ADLや全身機能の低下、特に脳血管障害を有する場合に認められやすい嚥下機能障害を背景に起きる肺炎で、高齢者の食事摂取に関連して発症する。予防には食事形態の工夫や食事時の体位調整、嚥下評価と嚥下リハビリテーション、口腔ケア、胃ろうなど人工栄養等がある。NHCAP(医療・介護関連肺炎)ガイドライン2017では誤嚥性肺炎の予防として肺炎発症抑制、抗菌薬投与の減少を期待して口腔ケアが推奨されている。

誤嚥性肺炎には食事時に食物を下気道に誤嚥する「顕性誤嚥」と睡眠時などに口腔内分泌物が下気道に流れ込む「不顕性誤嚥」がある。特に不顕性誤嚥での原因菌は口腔内細菌であり、直接的に口腔内の菌量を大きく減少できる口腔ケアは不顕性誤嚥の予防に重要である。高齢者の発熱や感冒症状に軽症の誤嚥性肺炎は隠れており、無症状の時期からの口腔環境整備や指導が重要である。また、老衰が進行している状態、がん、認知症などの終末期状態は誤嚥性肺炎の高いリスク因子であり患者家族や社会的背景を考慮しながらケアをすすめる必要がある。

1次予防としての高齢者や家族への啓蒙や指導、歯科治療とともに、誤嚥性肺炎治療後の2次予防としてのかかりつけ医と総合病院でのケア指導がたいせつであり、より細やかな医科歯科連携や地域での取り組みをすすめる必要がある。