第4回学術講演会のキーワードは「歯原性菌血症」「口腔機能低下症」「咀嚼機能回復と栄養」です

◇場所:高松市歯科救急医療センター 4階・大ホール

◇日時:平成29年3月4日(土)19時~21時

 

◇演題:『予防歯科』から『生活習慣病を予防する歯科』への転換

     〜 お口の専門的ケアが、生活習慣病の予防・改善になる理由 ~

 

◇講師:鶴見大学歯学部探索歯学講座 臨床教授

    神奈川県綾瀬市(医)武内歯科医院 理事長

      武内 博朗先生

 

※ 話題のセミナーのダイジェスト版ともいえます。

会員の先生方はもちろん、スタッフの方々にもお勧めの講演会です。

 

要旨

■予防歯科の新しいパラダイム

~ NCDs(生活習慣病)を予防するための歯科外来のすすめ ~

総論を提示したうえで、開業医が実践出来る内容と役立つ各論を判り易く解説します。

(1)歯周炎(慢性持続性炎症)の制御から血管・代謝の健康へ

(2)咀嚼機能回復から代謝・体組成の改善へ

 歯科口腔領域の予防が、NCDsの 発症予防、抗加齢、健康増進とどのように関係しているのかをお話しします。近年、健康だった人がNCDsを経由し、寝たきりに至るまでの全体像が明らかになり、因果関係と共に示されました。歯科的介入が具体的にどのような機序で血糖値を下げるのか等を解説し、補綴医療による咀嚼機能回復と保健指導の組み合わせによる健康増進効果の関係についても紹介致します。

歯周病は、持続性炎症と血管病

28本の歯の全周に約5㎜の歯周ポケットとよばれる潰瘍があると、この傷口は72cm2の名刺サイズの潰瘍面となり、慢性持続性炎症が生じると腫れた歯肉から供給される炎症性物質が血糖値を制御するインシュリンの働きを阻害するので、糖質代謝に悪影響を与えます。

さらにこの潰瘍面から日々細菌や内毒素など炎症性物質が血管系の中に入り続けて歯原性菌血症が生じます。この状態は数年に渡り血管内皮細胞を傷つけ、アテロームと呼ばれるコブが作られ、血管が狭くなり、動脈硬化の原因にもなります。歯周病予防は、歯の健康のみならず、循環器の老化防止、糖質代謝の悪化防止、抗加齢にも関係する予防行動と言えます。

咬む機能を生涯維持する

近年全身的虚弱の最初のつまずきが、大臼歯の喪失であると考えられています。大臼歯を失うことで、軟性食材である糖質偏重食(炭水化物:ご飯、パン、麺類などの過剰摂取)となり、丸呑みによる食速度増加と食後高血糖、およびカロリーオーバーやタンパク質・ビタミン低栄養等と関係していたのです。その後タンパク質低栄養(低アルブミン血症)を経由し、骨格筋量低下からロコモディブ症候群へと負のスパイラルがスタートするのです。

歯科補綴医療はこうした状態を改善し、糖尿病などの代謝性疾患に対するきわめて初動的な領域を担っているのです。咀嚼機能回復と保健指導を有機的に組み合わせ、代謝、体組成の改善の発現までを包括し補綴診療とすることで、歯科がより一層健康寿命の延伸に寄与するものと思われます。

 

※  会員の先生方は日歯生涯研修ICカードをお持ち下さい。